第29回実践化学工学講座
【チュートリアル】化学工学の基礎
(午前)講師:馬越 大[大阪大学大学院基礎工学研究科 教授]
(午後)講師:松山 秀人[神戸大学先端膜工学研究センター センター長]
講義内容
化学工学を学んでいない受講生を対象とした化学工学とはどのような学問であるかを学び,実践化学工学講座の理解を助ける入門講義です.
化学工学の基礎を再確認したい方にも受講をお勧めします.この講義では,化学工学で扱う『反応させる』,『分離する』などの操作がどの様な原理に基づいているかについて学習します.また,装置の設計や運転に必要な物質やエネルギーの流れを表す式について,その式が表す意味とどのような考え方で導出されるのかについて講義を行います.さらに,化学工学の基礎となる物質収支,エネルギー収支に関する講義や簡単な演習も行います.
午前の講義では,化学工学の歴史を振り返りながら,基本的な考え方・戦略について説明します.また,簡単なプロセスを対象にした例題・演習問題に取り組む事により,物質収支やエネルギー収支の基本的な考え方を説明します.さらに,反応速度式や単位(次元解析)など,専門単元を理解する
うえで必須の内容について説明します.
午後の講義では,反応工学の基礎として,回分槽型反応器,連続槽型反応器,管型反応器の設計方法を説明します.また,分離の基礎として各種分離法を紹介するとともに,ガス吸収速度を表す二重境膜モデルについて説明します.
さらに,物質の流れ,熱移動の基礎として,円管内速度分布と境膜説による伝熱の取り扱いを説明します.
第1章 反応工学
(午前)講師:河瀬 元明[京都大学大学院工学研究科 教授]
講義内容
反応工学は反応器を設計し,運転条件を決定する方法論です.午前の基礎編では,反応器の設計と運転条件決定に必要となる理論を概説します.
反応速度の表し方,反応速度の濃度依存性,温度依存性について説明した後,回分式反応器と流通式反応器の速度論的物質収支とエネルギー収支を表す方程式の導出と典型例の求解方法を解説します.反応工学の本質は実際に反応が進行している濃度と温度を考えることにあります.
反応器内の混合状態と濃度分布,温度分布の関係,それによる反応器性能の違いを解説し,反応速度解析法ならびに反応器設計法,反応器シミュレーション法へと応用する方法を説明します.主として,気相反応,液相反応,気固触媒反応を対象反応系としますが,他の形式の反応についてもできるだけ取り上げます.
テキスト内容
(基礎理論編)
1.1 化学反応の量論式
1.2 化学反応の分類
1.3 反応器の分類
1.4 化学反応の量論関係
1.4.1 量論関係と反応進行度
1.4.2 反応率
1.5 化学反応の速度
1.6 設計方程式
1.7 複合反応
1.8 非等温反応
1.9 気固触媒反応
(午後)講師:常木 英昭[早稲田大学理工学術院 招聘研究員 / 元㈱日本触媒]
講義内容
午後の応用編では,具体的な反応装置・プロセスの設計に反応工学がどのように活用されているのか,実際に研究開発時の解析例や企業化した触媒反応プロセスの例を中心に紹介する.また,例題・演習を通してラボでの実験データの解析方法からパイロットプラント・実プラントの基本設計方法まで解説する.具体例では反応速度式およびそのパラメータ決定・反応器設計のための速度式(連立微分方程式)の積分などをExcelや各種ツール(Python・Mathcad)を用いて解析した例を示す.
データ解析例
気固触媒反応、液固触媒反応、液相均一反応
プロセス設計例
・管型触媒反応器
断熱型反応器:液相付加反応、 熱交換型多管式反応器:気相分子内脱水反応
・連続槽型反応器(回分式反応器): 液相懸濁床酸化反応
・ハニカム型反応器:排煙脱硝
・実用触媒の触媒有効係数
テキスト内容
(応用編)
1.10 反応プロセス設計における反応工学の役割
1.11 反応データの解析による反応速度式の決定
1.11.1 平衡を考慮する必要のある液相均一触媒を用いた2次反応(エステル交換反応)
1.11.2 気固触媒反応 メタクロレイン酸化→メタクリル酸合成(企業化実例)
1.11.3 気固触媒反応 パラメトキシトルエン(PMT)合成 ラングミュアー・ヒンシェルウッド(LH)機構
1.11.4 液固触媒反応 エタノールアミン合成(企業化実例)
1.12 管型反応器(PFR)の設計
1.12.1 断熱型反応器:液相付加反応
1.12.2 熱交換型多管式反応器:気相分子内脱水反応(企業化実例)
1.13 連続槽型反応器(CSTR)の設計
1.14 半回分反応器(Semi BR)の設計(モノマー追加型反応)
1.15 ハニカム型反応器の設計(排煙脱硝)
1.16 実用触媒における触媒有効係数の取扱
1.16.1 有効拡散係数
1.16.2 Thiele数の一般化
1.16.3 種々の形状の触媒粒子に対する触媒有効係数
1.16.4 触媒有効係数の決定法
第2章 蒸留
(午前)講師:外輪 健一郎[京都大学大学院工学研究科 教授]
講義内容
蒸留は化学産業で最も広く用いられている分離技術です.本講義は,これまでに蒸留を学んだことのない初心者を対象として,蒸留装置の原理と基本的な操作,設計法を解説します.講義では,まず蒸留技術の原理を理解するために欠かすことのできない気液平衡について解説します.
その後,単純な蒸留操作であるフラッシュ蒸留,単蒸留の解説を行い,蒸留の考え方と原理をより深く理解することを目指します.そのうえで,純度の高い製品を得るために使われる精留塔の原理と設計法を説明します.精留は多段操作の分離で,その設計や解析には気液平衡のほか,装置内の複雑な物質と熱の流れの把握が求められます.講義では,この複雑な装置の特徴をうまくとらえたMcCabe-Thiele法と呼ばれる作図による設計法を解説して,最小理論段数,最小還流比等の事項について説明します.それぞれの原理,手法に対する理解および習熟度を深めて頂けるように,適宜演習を行いながら講義を進めます.
テキスト内容
(基礎理論編)
2.1 気液平衡
2.1.1 純物質の蒸気圧
2.1.2 混合物の気液平衡
2.1.3 混合物の蒸発現象
2.2 単蒸留
2.3 フラッシュ蒸留
2.4 精留
2.4.1 考え方
2.4.2 構造
2.4.3 塔内の物質収支
2.4.4 McCabe-Thiele法による所要段数計算
2.4.5 蒸留の所要エネルギー
2.4.6 最小還流比と最小理論段数
2.5 バッチ蒸留
2.6 特殊な蒸留
2.6.1 共沸蒸留
2.6.2 抽出蒸留
(午後)講師:野田 秀夫[関西化学機械製作㈱ 代表取締役社長]
講義内容
実習では①連続と②回分操作の2種類のシステムを体験していただく予定です.それらの特徴と使用範囲などを説明します.次に使用される主要機器の解説をします.①塔本体,②塔に内装される気液接触用の充填物またはトレイ,③実際に使用するトレイと充填物について,④塔頂で蒸気を凝縮するコンデンサー,⑤蒸留塔に蒸気を供給する数種類のリボイラーの比較,⑥熱回収のための熱交換器などの補助装置について説明します.
最新の省エネルギー型の蒸留システム(HIDiC)および回分操作でチェンジトレイを使用して始めて可能になった省エネ+省時間についても少し触れたいと思います.
テキスト内容
(実習編)
2.7 はじめに
2.8 基本装置
2.8.1 塔(TowerまたはColumn)
2.8.2 充填物(Packing)
2.8.3 棚またはトレイ(Tray)
2.8.4 塔径の推算
2.9 リボイラー
2.10 コンデンサー
2.11 熱交換器
2.12 基本的な操作
2.12.1 回分操作
2.12.2 連続蒸留の操作
2.13 最近の蒸留
2.13.1 HIDiC(内部熱交換型蒸留塔)
2.13.2 ウォールウェッターとWW蒸留プラス
2.13.3 チェンジトレイ
2.14 実習について
第3章 晶析
(午前)講師:三上 貴司[新潟大学工学部 准教授]
講義内容
晶析の設計計算について書かれた教科書はあまりなく,初学者がこれから学ぼうとするには,古書や洋書に頼らざるを得ないのが現状です.この講義では,晶析の初学者を対象として,現象理解に基づく設計計算法の基礎を学びます.午前の講義では,応用編で前提となる専門用語や基本知識の解説を中心に,関数電卓での設計計算例を例題形式で学びます.
1.晶析操作の概要
2.晶析基礎現象
3.晶析計算の基礎
4.回分晶析装置の設計
5.連続晶析装置の設計
テキスト内容
(基礎編)
3.1 基本事項
3.2 溶解度
3.3 物質移動
3.4 装置容積
3.5 物質収支
3.6 熱収支
3.7 個数収支
3.8 冷却曲線
3.9 撹拌速度
3.10 粒径分布
(午後)講師:對馬 一平[カツラギ工業㈱ 営業技術部 部長代理]
講義内容
午後の応用編では、これから晶析プロセスの開発・建設に携わろうとしている技術者が直面している、あるいは直面すると思われる疑問点、および晶析設備を管理している担当者が抱えている問題を取り上げて、以下に記載する項目に関して例題を中心に演習を交えて解説する。
1.具体的な晶析装置の各種選定・設計のポイント
2.連続および回分操作における粒径変動の要因と対策
3.スケーリングの実態と実践的改善方法
4.実践的なビーカー規模からパイロット規模での確認試験方法
5.種晶添加のメリットと実務上の問題点
テキスト内容
(応用編)
3.11 はじめに
3.12 溶解度曲線と固液相図
3.13 晶析装置の各種選定・設計のポイント
3.13.1 回分晶析装置の設計
3.13.2 連続式晶析装置の設計
3.13.3 晶析装置形式および操作の選定
3.14 所望品質未達成の要因と対策
3.14.1 製品結晶粒径に及ぼす操作条件の影響
3.14.2 結晶純度と形状に及ぼす操作条件の影響
3.14.3 持続的な粒径変動が起こる場合
3.14.4 粒径が大きくなりすぎる場合
3.14.5 粒径を大きくできない場合
3.14.6 連続晶析操作特性因子を用いた設計理論
3.15 スケーリングの実態と実践的改善方法
3.15.1 目的成分の高過飽和領域のスケーリング
3.15.2 飽和濃度を超えた異物質のスケーリング
3.15.3 懸濁液移送配管の閉塞
3.16 晶析試験方法
3.16.1 回分式での結晶成長速度と誘導時間の測定
3.16.2 MSMPR装置を用いた動特性の測定
3.16.3 小規模晶析装置による連続式実証試験
3.17 種晶添加のメリットと実務上の問題
3.17.1 回分晶析操作における種晶の添加
3.17.2 連続晶析操作における種晶の添加
3.18 おわりに
第5章 吸着
(午前)講師:瓜田 幸幾[長崎大学大学院工学研究科 准教授]
講義内容
物質の細孔構造の評価方法の1つに,気体分子をプローブとして固体への吸着現象を利用した吸着等温線によるものがある.その中で,定容量法は吸着等温線測定において最もよく用いられ,自動化された汎用機器も定容量法によるものである.測定・解析の自動化により,細孔構造評価速度は格段に上がっているが,その理論はブラックボックス化してしまっている.ここでは,吸着等温線測定,すなわち,対象とする材料の細孔構造評価に必要不可欠な「吸着の基礎」を講義し,合わせて実際の評価におけるポイントについて具体的に解説する.
テキスト内容
5.1 はじめに
5.2 吸着は何故起こるか
5.3 分子間相互作用
5.4 吸着剤
5.5 吸着等温線の種類
5.6 吸着平衡式
5.7 吸着速度
5.8 気体吸着測定による細孔構造評価
5.9 比表面積・細孔容積の計算
5.10 細孔径の評価
5.11 吸着熱評価
5.12 吸着等温線測定テクニック
(午後)講師:相部 紀夫[元武田薬品工業㈱]
講義内容
活性炭は特異な細孔構造と疎水性を有し食品,医薬,化学の産業分野などで広く利用されている.その吸着機能は,物理吸着と化学吸着があり,前者は長年続いてきた機能である,近年,その形状を粉末状・粒状からハニカム状に変え,表面を処理することで化学吸着機能を付与し特定の成分に特有な選択的吸着性の活性炭が注目され,今後も化学吸着機能がさらに重要になると期待されている.
本講演では,まず,物理吸着機能を利用した環境対策事例を紹介する.引き続き,薬品処理を施した脱臭用活性炭の化学吸着特性に関する吸着実験を実施し,得られた各種データを解析することで脱臭塔を設計するための資料を作成し,いかに吸着塔の設計を行うかを演習する.また,低通気抵抗で高接触効率のハニカム状活性炭を実用化するためのアプローチ手順を具体的に解説する.さらに,ハニカム状活性炭の特性を生かした応用分野を提案する.一連の講演を通して何らかを学んでいただけたら幸いである.
テキスト内容
(応用編)
5.13 吸着の応用技術
5.14 工業用吸着剤としての活性炭の特性
5.15 物理吸着事例
5.16 化学吸着事例
5.17 化学吸着を応用した脱臭技術
5.17.1 基礎実験
5.17.2 酸性ガスの脱臭実験
5.17.3 塩基性ガスの脱臭実験
5.17.4 中性ガスの脱臭実験
5.18 粒状活性炭による破過吸着および平衡吸着
5.18.1 破過吸着装置,吸着条件と破過曲線
5.18.2 破過曲線
5.18.3 破過曲線の解析
5.18.4 脱臭塔の設計
5.19 ハニカム状活性炭による破過吸着
5.19.1 ハニカム状活性炭の特徴とその吸着装置
5.19.2 ハニカム状活性炭の破過曲線
5.19.3 ハニカム状活性炭の破過曲線データの解析
5.19.4 脱臭塔の設計
5.20 ハニカム状活性炭による破過吸着
第6章 粉粒体操作・貯蔵・ろ過・集じん
(午前)講師:松坂 修二[京都大学京都大学成長戦略本部 / 名誉教授]
講義内容
粉粒体を取り扱う基礎的知識を学び,いくつかの演習で理解を深める.はじめに,粉粒体を構成する個々の粒子の大きさの定義を明らかにし,粒子が集合した粉粒体の粒度分布の表し方を示す.すなわち,集合体を構成する粒子の大きさの平均値(平均粒子径)や大きさの広がり(分布の幅,例えば幾何標準偏差)を解説する.粒子径の測定法や表現の方法が異なると,同じ集合体でも値が異なることを説明する.次に,1 個粒子の運動を表す一般式(粒子の運動方程式)を導出したのち,重力場や遠心力場での粒子の運動を式で表し,粒子の沈降や動的挙動の把握に役立つことを示す.さらに,粉体ハンドリングと密接な関係する粒子間相互作用力として,静電気力,ファンデルワールス力,液架橋力を取り上げて推算式を説明する.最後に,粒子分散系の性質を解説する.
テキスト内容
6.1 粒子の大きさと形
6.1.1 代表粒子径と粒子径測定法
6.1.2 粒子径分布(粒度分布)
6.1.3 平均粒子径
6.2 単一粒子の運動
6.2.1 単一粒子の運動方程式と流体抵抗
6.2.2 重力場・遠心力場下での運動
6.2.3 ブラウン運動と粒子拡散係数
6.3 2粒子間相互作用
6.3.1 液架橋力
6.3.2 ファンデルワールス(van der Waals)力
6.3.3 静電気力
6.3.4 粒子間相互作用力の比較
6.3.5 粒子分散系の性質
(午後)講師:遠藤 禎行[同志社大学理工学部 嘱託講師 / 元住友化学㈱]
講義内容
化学プロセスなどで取扱う物質の状態は,気体,液体および固体のいずれかであるが,その中で固体は粒子状物質として気体や液体中に分散して存在する.粒子が介在すると,その現象は粒子の種類によって多種多様で複雑になり,取扱いは厄介なものになる.
午後の前半では,午前の一個の粒子に着目した基礎知識を粒子層(粉体)に展開して,①気体や液体とは異なる粉体の基礎的特性(粒子充填状態,引張りやせん断などの力学的強度),②貯槽内の粉体圧と貯槽からの粉体の排出,③粒子充填層を通過する流体の抵抗(圧力損失)と粒子充填状態の関係などの基礎的事項に重点をおいて,現象観察の例示や演習を交えて解説し,複雑な粉体操作に対して科学的に対応できる素地づくりを目指す.後半では,粉体操作の中でニーズの高い「ろ過」と「集じん」を取上げ,それらの原理と理論(たとえば,Ruthの式,ろ過比抵抗の物理的意味など)について講義し,ろ過面積やろ過時間を決定するなどの工業的な取扱いについて解説する.
テキスト内容
6.4 粒子層の性質
6.5 粒子層の強度
6.5.1 引張強度
6.5.2 せん断強度
6.6 貯槽内の粉体圧
6.7 貯槽からの排出
6.8 粒子充填層を通過する流体抵抗
6.9 ろ過
6.9.1 ろ過の基礎式
6.9.2 遠心ろ過
6.10 集塵
6.10.1 集塵装置の圧力損失と粒子捕集性能
6.10.2 サイクロン
6.10.3 バグフィルター
6.10.4 エアーフィルター
第7章 流動・伝熱
(午前)講師:堀江 孝史[大阪公立大学大学院工学研究科 准教授]
講義内容
化学プロセスを支配する運動量(流動),エネルギー(熱)の移動の原理を相似則の観点から解説し,これらの移動原理に基づき,流動と伝熱の基礎となる流体摩擦係数と圧力損失,力学的エネルギー収支,伝熱抵抗の考え方と伝熱係数などを初学者にもわかりやすく解説することで,簡単な配管設計および,二重管式熱交換器の設計が行えるようにする.
1.ニュートンの粘性の法則
2.運動量,エネルギー,物質移動の相似性
3.層流と乱流
4.流体摩擦係数
5.力学的エネルギー収支とベルヌーイの式
6.伝熱機構とフーリエの法則
7.伝熱抵抗の考え方と伝熱係数
8.総括伝熱係数と対数平均温度差
9.二重管式熱交換器の設計
テキスト内容
(流動編)
7.1 流体と流れ
7.2 乱流と層流
7.3 管内流の速度分布
7.4 流体摩擦係数
7.4.1 層流の流体摩擦係数
7.4.2 乱流の流体摩擦係数
7.5 エネルギー収支
7.5.1 円管内の流体輸送に要する動力の計算
7.5.2 管路の変化および挿入物,付属物による損失の求め方
(伝熱編)
7.6 伝導伝熱
7.6.1 フーリエ(Fourier)の法則
7.6.2 円管壁と多層壁の熱伝導
7.7 対流伝熱
7.7.1 境膜伝熱係数
7.7.2 総括伝熱係数
7.8 熱交換器
7.8.1 平均温度差
7.9 蒸発装置
7.9.1 状態変化をともなう伝熱
7.9.2 沸騰伝熱
7.9.3 凝縮伝熱
7.9.4 蒸発缶
7.9.5 多重効用蒸発缶
7.10 ふく射伝熱(放射伝熱)
7.10.1 黒体
7.10.2 黒度
7.10.3 二物体間のふく射授受
7.10.4 ガスふく射
7.10.5 輝炎または微粉炭炎からのふく射
(午後)講師:古川 龍二[古川技研 代表 / 元㈱カネカ]
講義内容
企業での化学系研究者や技術者が,現実の制約条件の中で仕事をするためには,①その分野の基本項目となる基礎理論を理解し,応用するための基本的な知識を身につけており,②必要が生じたときに実際に応用できることが重要となる.基礎理論では流動・伝熱の実用に必要な基本項目を順序良く一覧する.応用編では反応装置システムを題材とした実践的な演習を通して,基礎理論を応用した計算の実際に触れる.演習の内容は,化学系企業での具体例としてバッチ式反応槽に新たな攪拌翼を用いることを想定し,攪拌槽内の伝熱性能推算,送液ポンプの所要動力及び冷凍機の必要能力を求める.特に,伝熱性能の推算では,実験装置を用いた模擬実験によるデータの取得から,取得データの解析方法,実機の伝熱性能の推算,反応器内の伝熱コイル面積の推算に至るまでの一連のプロセスを実際の演習を通して解り易く解説する.
テキスト内容
7.11 実践的演習
第8章 乾燥
(午前)講師:立元 雄治[静岡大学学術院工学領域 准教授]
講義内容
乾燥操作は,液体で湿った材料を加熱して液体を蒸発除去する操作であり,さまざまな産業分野で使用されている.本講座では,乾燥操作の初学者を対象として,以下のような乾燥操作の基本事項について例題・演習を交えつつ解説する.
・乾燥時に起こる現象(定率乾燥期間,減率乾燥期間)
・含水率および乾燥速度の定義
・空気の性質(湿度,湿球温度,湿度図表の読み方)
・乾燥速度,乾燥時間の評価
・乾燥機設計の基本事項
テキスト内容
(基礎理論編)
8.1 はじめに
8.2 湿度と湿度図表
8.3 乾燥の基礎理論
8.3.1 含水率と乾燥速度の定義
8.3.2 乾燥特性
8.3.3 定率乾燥速度
8.3.4 減率乾燥速度
8.3.5 乾燥時間
8.4 連続式熱風乾燥機の設計
8.5 乾燥収縮
(午後)講師:高橋 邦壽[スケールアップコンサルタント]
講義内容
乾燥操作をラボから実機にスケールアップするためには,乾燥の基礎知識,乾燥装置の選定と設計,スケールアップのための実験(ラボ・パイロット),実機設備の運転方法・トラブルなどの知識を身に着けておく必要がある.
小実験研究者向けに,乾燥機の種類・構造・特徴・運転ポイント,伝導受熱型乾燥主体で乾燥のスケールアップ(ラボ実験方法など),実機の運転トラブル・対策,乾燥知見などについて簡単な例題を行いながら解説する.
1.乾燥機の種類,構造および特徴・運転ポイント,熱風受熱型乾燥機,伝導受熱型乾燥機
2.乾燥特性
3.乾燥実験とスケールアップ
4.乾燥時間推算
5.コニカル乾燥機の設備・運転上のポイント
6.振動,撹拌,逆円錐式乾燥機の設備・運転上のポイント
テキスト内容
(応用編)
8.6 乾燥機の分類
8.7 乾燥機の選定
8.8 乾燥機の種類,構造および特徴・運転ポイント
8.8.1 流動層乾燥機
8.8.2 噴霧乾燥機
8.8.3 凍結乾燥機
8.8.4 箱型乾燥機
8.8.5 円錐型乾燥機(ダブルコーン型,コニカル乾燥機)
8.8.6 円筒振動式乾燥機
8.8.7 円筒撹拌式乾燥機
8.8.8 逆円錐型乾燥機(ナウターまたはSV乾燥機)
8.8.9 ろ過・乾燥機
8.9 乾燥実験
8.9.1 乾燥特性
8.10 乾燥時間の推算
8.10.1 ろ過乾燥機での乾燥時間θT
8.10.2 撹拌型乾燥機による間接加熱による真空乾燥時間θT
8.10.3 伝導受熱型乾燥機の乾燥時間算出
8.11 伝導加熱型乾燥のトラブルと防止対策
8.11.1 製品の安定性
8.11.2 ダマの生成
8.11.3 スケーリングの生成
8.11.4 材料の溶融
8.11.5 乾燥材料の排出
8.11.6 乾燥圧力が上がらない
8.12 伝導受熱型乾燥の知見
8.12.1 乾燥速度と溶媒残存の影響
8.12.2 粉砕による溶媒残存の低減
8.12.3 溶媒和物の乾燥
8.12.4 水和物の乾燥
8.12.5 乾燥での不活性ガスの影響
第9章 撹拌・混合
(午前)講師:菰田 悦之[神戸大学大学院工学研究科 准教授]
講義内容
撹拌・混合は,汎用の工業プロセス操作であり,均一化・分散に加えて,ガス吸収,溶解,反応,伝熱の促進など,多様な目的に使用されています.本講座の午前の部では,この操作に関する基礎的な以下の内容について,演習を交えながら講義します.
1 撹拌装置の基本事項:流体粘度に応じた撹拌翼,翼形状・設置位置と流動パターンの関係,邪魔板の役割,撹拌レイノルズ数とフルード数の定義.
2 撹拌所要動力:撹拌動力の影響因子と動力数の定義,線図・相関式を用いた撹拌所要動力の算出,非ニュートン流体の撹拌所要動力の算出.
3 流体混合:動力数,吐出流量係数を用いた混合時間の算出,混合時間の測定と混合性能の評価.
4 撹拌操作論の基礎:回分式,流通式撹拌槽に関する物質収支式,エネルギー収支式.完全混合槽モデルに基づいた収支式の導出,およびその解を用いた反応,伝熱,物質移動操作の設計と性能評価.
5 スケール・アップ:条件設定と操作因子の関係
テキスト内容
9.1 撹拌操作論の基礎-完全混合槽モデル
9.1.1 反応操作
9.1.2 伝熱操作
9.1.3 物質移動操作
9.2 撹拌に関する基本的事項
9.2.1 撹拌装置の基本構成
9.2.2 撹拌翼の形状
9.2.3 撹拌翼の配置位置
9.2.4 邪魔板のない円筒層内の流動パターン
9.2.5 邪魔板とドラフトチューブ
9.2.6 撹拌レイノルズ数
9.2.7 フルード数
9.3 撹拌所要動力
9.3.1 トルクと動力の関係
9.3.2 動力数
9.3.3 動力線図
9.3.4 動力数の相関式
9.3.5 非ニュートン流体の撹拌所要動力
9.4 流体混合
9.4.1 吐出流量数,循環流量数
9.4.2 混合時間
9.4.3 混合時間と撹拌動力の関係
9.5 スケールアップ
(午後)講師:亀井 登[元㈱ダイセル]
講義内容
午後の演習の部では,この操作の実操作や設計に関わる実践的な内容を,以下の項目に対して例題を中心に演習を交えながら講義します.
1 実践的な知識として,実装置における撹拌機モーターからの動力の伝播メカニズムやモーター動力設計方法など.
2 具体的な撹拌所要動力の算出方法,混合時間に着目した効率的な撹拌翼の設計.
3 固液系の固体分散のメカニズムと,物質移動促進に関わる設計のポイント.
4 液液系の分散のメカニズムと,スケールアップ方法.
5 気液系のガス分散並びに物質移動に関わるメカニズムとその設計のポイント.
6 高粘度液撹拌の撹拌動力の算出並びに非ニュートン流体の取扱い.
テキスト内容
(実践・演習)
9.6 撹拌装置設計/操作事例
9.7 実践演習の予備知識
9.8 混合時間の問題
9.9 固液撹拌の問題
9.9.1 低濃度スラリーの分散およびスケールアップ
9.9.2 高濃度スラリーの混合について
9.10 液液撹拌の問題
9.10.1 相分散回転数
9.10.2 物質移動と液滴径について
9.11 気液撹拌の問題
9.11.1 ガス分散のメカニズムと動力の挙動
9.11.2 物質移動量の推算
9.12 層流域における動力の問題
第10章 プロセス制御
(午前)講師:加納 学[京都大学大学院情報学研究科 教授]
講義内容
流量制御や温度制御を何気なく実務で使っているが,きちんと「プロセス制御」を勉強したことがないという技術者を対象に,プロセス制御の基礎
を伝授します.プロセス制御の基礎を身に付けたと言えるためには,1)現在でも適用件数の90%以上を占めるPID制御の仕組みとその調整方法,
2)制御系設計の基礎となるプロセスのモデル化方法,を習得しなければなりません.本講では,フィードバック制御を中心とするプロセス制御で
必須の基礎用語,伝達関数やブロック線図などの制御工学特有の基礎知識,プロセスのモデル化方法,PID制御の仕組みと調整方法を解説し
ます.これだけ知っておけば90%は大丈夫という内容で,最小限の勉強で最大限の効果を目指します.思い切って言えば,制御したいプロセスを,
一次遅れ,二次遅れ,積分,および無駄時間の組み合わせでモデル化し,定常偏差なく,振動させずに,制御変数を設定値に維持できるPIDコント
ローラが設計できれば良いのです.これらを受講者が自分でできるようになることが本講の目的です.
テキスト内容
10.1 プロセス制御の概要
10.1.1 プロセス制御の役割
10.1.2 フィードバック制御
10.1.3 フィードバック制御系の構成
10.1.4 フィードバック制御系の設計問題
10.2 プロセスモデルの構築
10.2.1 物理モデルとブラックボックスモデル
10.2.2 状態変数と状態方程式
10.2.3 線形化
10.3 伝達関数と過渡応答
10.3.1 ラプラス変換
10.3.2 伝達関数
10.3.3 プロセスの過渡応答
10.3.4 1次遅れ要素
10.3.5 積分要素
10.3.6 むだ時間要素
10.3.7 2次遅れ要素
10.3.8 高次遅れ要素
10.3.9 極と過渡応答
10.3.10 ブロック線図
10.4 運転データからのモデル構築
10.4.1 1次遅れ要素のモデリング
10.4.2 1次遅れ+むだ時間要素のモデリング
10.5 PID制御
10.5.1 制御系の基本的な性質
10.5.2 PID制御の基礎
10.5.3 PID制御パラメータの役割
10.5.4 PID制御パラメータの調整則
10.5.5 I-PD制御
10.5.6 PID制御の実装
10.5.7 制御性能の評価
(午後)講師:児林 智成[住友化学㈱生産安全基盤センター 主席研究員]
講義内容
本講座の後半では,プロセス制御が実際の企業活動の中でどのように活用されているかを理解してもらうため,まず,その目的,方式・手法(ソフト面),装置・計器(ハード面),コンピュータシステムなど,基礎知識全般について一通り学ぶ.次に,前半の講義で理論面を学んだ制御技術について,化学プロセスの各要素を対象とし,実際面から基本的な使い方を学習する.その際,簡単なモデルを組み込んだシミュレータ上で様々なケースを試行しながら制御応答を確認して,制御の効用やパラメータ調整の難しさを体験する.具体的なプロセスの例として蒸留塔を取り上げ,その制御の問題点,基本的な制御系,高度な制御手法などについて学ぶ.最後に,演習問題で,制御ループの設計や制御上のトラブルシューティングに挑戦することでさらに理解を深める.受講対象は,化学工学や制御工学の基礎知識やそれに関連した実務経験があればよいが,なくても理解できるように,実例を交えながらできるだけわかりやすく説明する予定である.
テキスト内容
10.6 プロセス制御の実際
10.6.1 制御の目的
10.6.2 様々な制御方式
10.6.3 計装制御システム
10.7 コントローラ設計の実際
10.7.1 プロセス特性と制御動作
10.7.2 チューニングの指針
10.7.3 チューニングの実際
10.8 蒸留プロセスの制御
10.8.1 制御目的
10.8.2 制御ループ構成
10.8.3 基本制御方式
10.8.4 アドバンスト制御
10.8.5 P&ID
10.9 総合演習
10.9.1 制御ループの設計
10.9.2 トラブルシューティング